大倉山の住まい訪問

 こんにちは。月明設計室の中込です。

 先日、頼まれていた表札が完成したので、お届けに大倉山のKさんの住まいを訪れました。お引渡しから約4カ月。その後の様子を見させて頂きながら、写真撮影もさせていただきました。

 気が散るだろうと撮影中はわざわざ家を空けてくださり、一人きりになっての撮影。三時間ぐらい時間をいただいてしまいました。(Kさんありがとうございます)

 お引渡しが済み、暮らしがはじまった住まいに、設計者が一人きりで滞在するという事はそうそうありません。本当にその住まいがうまくいったかどうかは暮らしてみないとわからないので、どのような暮らしがそこで営まれているのかほんのわずかな一部でしかないかもしれませんが、感じる事ができる貴重な時間を頂きました。

 実際の暮らしの様子。一つに音や光が大きいかもしれません。静かな室内でかすかに感じる洗濯機のまわる音。冷蔵庫もそうですが、生活している感じがします。外から入ってくる人や鳥の声、車や作業音などもその場所の特性も含め、何気ない普段の生活を感じる事ができます。そして時間や季節によって変わる光の様子。室内の色や雰囲気がそれによって大きく変わってきます。そういう事も計画段階ではこう感じるだろうと予測したり、こうすると良いだろうと考えながら計画します。それが実際となり、予想通りの部分や予想を超えてくる部分に遭遇したりするのが、設計者の楽しみだったりします。

 Kさんの住まいはマンションですが、大きな窓から低い位置で十分な空を感じる事ができ、天気の良い日は富士山を見る事ができます。計画ではその個性を生かすように一番眺めの良い場所にソファーを配置し、そこから周りの寸法を決めていきました。

 結果としてこだわったソファーはとても良い具合でして、そこに座りぼーっと過ごす時間、そこに流れている時間は心地良く他には代えがたいものになったのではと思います。

 …と、ここまではとても良かったのですが、、、大失態。

気合いをいれて普段使っているレンズではなく、プロ用のレンズをレンタルで借りて撮影に臨んだのですが、レンズが入らない、、、なぜ???

その時は動揺して理解するまで時間がかかってしまいましたが、以前借りたレンズとは異なるレンズを頼んでしまったらしく、どうもミラーレス一眼レフのレンズだったようです。(素人カメラマンですみません。学びます。)室内撮影では広角レンズを使用する事が多いのですが、プロ用のレンズを借りて挑んだ為、普段使用している広角レンズは自宅に置いてきてしまいました。う~~~む。一つだけ持参したある程度の広角と望遠も取れる万能レンズでしばらく撮影を開始し、撮っていたのですが、、やはり厳しい。思うような写真が取れない。う~~~む。こんな機会はそうそうないので、土下座覚悟で、自宅の妻に連絡を入れ、、「も、も、もってきてくれませんか。」と伝える。状況を察してくださり、汗だくでレンズを持ってきてくれました。(本当にすみません。)

せっかく来たのだからと、妻に大倉山の住まいを見てもらいました。なかなか自分が設計した住まいを見てもらう事はないので、そういった意味でも良い時間になりました。ましてや暮らしがはじまってからの様子なので、とても貴重です。(Kさんありがとうございます。)

 なんとか広角レンズをセットし、再度撮影スタート。プロ用のレンズに比べ、ゆがみや光量等色々と差があるかもしれませんが、何とか無事撮影する事ができました。

(またしばらくしたら再度チャレンジさせてください。)

 撮影後、お昼までご馳走になってしまい、とても長居をしてしまいました。居心地がいいですね。色々とお話ができてよかったです。

 有名な言葉があります

『 建築家として、もっとも、うれしいときは、建築ができ、そこへ人が入って、そこでいい生活がおこなわれているのを見ることがある。日暮れ時、一軒の家の前を通ったとき、家の中に明るい灯がついて、一家の楽しそうな生活が感ぜられるとしたら、それが建築家にとっては、もっともうれしいときなのではあるまいか。家をつくることによって、そこに新しい人生、新しい充実した生活がいとなまれるということ、商店ならば新しい繁栄が期待される、そういったものを、建築の上に芸術的に反映させるのが、私は設計の仕事だと思う。つまり計算では出てこないような人間の生活とか、そこに住む人の心理というものを、寸法によってあらわすのが、設計というものであって、設計が単なる製図ではないというのは、このことである。』 建築家 吉村順三

 まさにその通りですね。

 そしてそのうれしい瞬間を見る事ができました。

 ほんの小さなささやかな事柄の集積が設計だと思います。常に様々な問題をひとつずつ紐解きながら、こうあってほしいと願う暮らしが実現できるように、設計に勤しんでいます。

 設計を信じ、住まいを信じ、いつか作り手の思いが届き、住まいがかけがえのないものになる事を信じて。へこたれそうになる事はよくありますが、こういったうれしい瞬間に出会えると明日への希望を頂いて頑張れます。

 事例としてホームページに早く掲載できるよう頑張ります。

 Kさん引き続きよろしくお願いいたします。