関心を寄せる -地球のこと 未来のこと-

 こんにちは。月明設計室の中込です。

 今年もあっという間。過ぎ去っていく日々。一年を振り帰ってみると、独立して設計してきた住まいがいくつか完成しました。ようやくと言ったところです。そして現在工事中の新築の住まいもようやく進んできました。先日、茅ヶ崎の住まいが無事上棟を迎えました。小坂をのぼり、開かれた場所に佇む、竹林を背景にしたその立ち姿に心躍らせてしまいました。「これは良い家になるなぁ」とすでに自画自賛です。

 少しずつ、着実に、歩んでいるような気がします。

 昨年の6月に独立して、今まで以上に設計に専念し、思いを込めるよう、大きなことから小さなことまで俯瞰し、想像し、配慮し、バランスを見ながら、悩み、検討し、決定する。小さな事を積み重ねていくと、ようやく図面ができあがります。作業時間とのバランスが一番くるいやすいのですが、少しずつペース配分がわかってきたように思います。いくつか経験する事で、だんだんと見えてきました。

 世の中は、変わらずコロナ社会が続いています。少しずつ、落ち着いてきているような、まだ油断できないような状況。世界の様子と日本の様子は違うような印象も受けます。勤勉な日本人はコロナとの付き合い方がわかってきているような気もします。(…まだ油断できませんが。)そんな中、今年は地球環境問題についての意識が高まった年と言えるかもしれません。CMやテレビドラマで目にする機会も増えているような気がします。今回はその地球環境問題についてお話させていただきます。(…すみません、今回は、長くなります。最近、学んだ事を忘れないようにたくさん書いておりますので、頑張って読んで頂ける方のみ、読んで頂ければと思います。一緒に学んでいければと思います。)

 10月末から2週間程度、イギリスのグラスゴーで開催されたCOP26は見過ごせない大きな出来事になりました。そしてその開催後、まもなく国交省が発表した住まいの新たな断熱等級の制度、地球の未来、そして日本の住まいの未来が、だんだんと見えてきました。

 世界192カ国の代表が集まり、地球に起こっている問題をどう解決していくか全世界が共通の理解を持ちながら目標を掲げるという会議が行われました。トランプ大統領政権下ではアメリカは脱退する等、全世界の意見をまとめ、足並みを揃えるのは難しい状況が続いてきた中で、バイデン大統領に代わり、地球の問題を直視し、取り組まなくてはもう間に合わないかもしれないという危機意識がすでに世界にはありました。またここでの決定事項いかんによっては地球の未来も変わる、人類の歩むべき道も変わる、経済市場にも大きな影響を与える事がわかっていました。

 日本ではまだまだ関心が低いように思います。ですが、まもなく誰もが無視できない状況がはじまると思います。まずは関心を寄せる所から始めましょう。自分自身の判断で、もう間違いはおかせないのです。今年の8月に出版された「地球の未来のため僕が決断したこと/ビル・ゲイツ著(早川書房)」は、地球の問題、人類がおかしてきた問題、そしてこれから取り組まなくてはならない課題についてわかりやすく書かれているので、おすすめです。私自身、刺激を受け、学び、色々考えさせられました。

 そもそも地球の気温が数度上がる事でどんな問題が生まれるのかご存じでしょうか。たかが数度ではすまされないのです。

地球温暖化による問題

1.暴風雨が増える …地表の気温があがると地表から蒸発する水蒸気が増える。水蒸気が増えるという事は雨が降りやすくなる。
2.干ばつが増える …暖かい空気は水分を欲する。地表から水分を吸い上げる。今世紀末には川が枯れるような地域が発生する可能性もある。農作物にも大きな影響を与える。
3.山火事が増える …植物や土が乾燥し、燃えやすくなる。カルフォルニアはすでに1970年代比で5倍増えている。政府も気候変動のせいであることを認め、今世紀末にはさらに倍増する可能性もある。
4.海面上昇で海岸部は窮地に陥る …北極圏、南極の氷が解け、膨張し、今世紀末には数十センチ上昇すると予想。マイアミは60㎝上昇。甚大な被害を受ける地域が増える。バングラディッシュはすでに深刻な問題。全国で農作物、家が流され死者が出ている。
5.植物、動物の生息域が狭くなる …2度上昇で8%~18%狭くなる。
6.サンゴ礁がなくなる …2度上昇でサンゴ礁が完全に失われる。サンゴ礁は海の生態系や海産物等、大きな影響を与える
7.熱中症、マラリアが増える …数億人規模で死の危険にさらされる。
8.さらに大量の温室効果ガスが放出される可能性がある …凍結していた土地の氷が解け、中に含まれていた大量の温室効果ガス、主にメタンが放出される可能性がある。破壊的な気候変動が短期間で起こる。

(参考:「地球の未来のため僕が決断したこと 」ビル・ゲイツ著/早川書房)

等々、間接的に影響するものはその他にも多々あると思います。

 そしてCOP26では、地球の気温上昇を、1.5℃に抑えるという目標を掲げました。2015年のCOP15パリ協定では、2℃に抑えるという目標にしていました。それを1.5℃まで下げたのです。おそらく上記の地球温暖化による問題で、2℃だと問題の影響が大きすぎるからだと思います。この1.5℃とか2℃とかという気温上昇は産業革命前の気温と比較されます。

 地球温暖化は、人類が犯してきた過ちです。その事自体が認められたのは2013年。各国の専門家による調査結果から国際連合のIPCCが発表した報告書によるものです。人類活動が温暖化の原因をつくっているという事を認めるにも時間がかかりました。

 地球温暖化は温室効果ガスの作用によるもの。その温室効果ガスとして代表格なのが二酸化炭素。二酸化炭素は、石油、石炭、天然ガスを燃焼する事で発生します。産業革命以降、人類は大量の石油、石炭、天然ガスを燃焼してきました。燃焼する事で生まれる二酸化炭素は、植物が吸収してくれます。産業革命以前は、地球と人類は良いバランスを保っていました。その為、産業革命以前の気温と比較されます。

 産業革命は、18世紀半ばからはじまりました。人類はここ200年~270年ぐらいの間で、地球を悪い方向へ導いた事になります。それ以前は地球と人類の関係が良かったのです人類は、自分達の事ばかり考えてきました。これからは、地球の事を考えなくてはなりません。そういう時代になります。すでに地球は、産業革命前と比較して、1.1℃あがっていると言われています。そうすると1.5℃はもう目の前。

 厄介なのは一度気温が上がると下げるのがとても難しいのです。二酸化炭素は大気中に排出されると、そのうちの1/5は、1万年後も残っているそうです。驚きですね。そして毎年510億トンの温室効果ガスが排出されている。2050年を目標に、二酸化炭素排出をゼロにすればよいと勘違いしがちですが、ゼロにするだけでなく、すでに排出された二酸化炭素を取りのぞかなくてはならない。その為には、技術革新が必要。炭素回収もそのひとつ。今後、どの分野の技術が革新的で現実的な発明をするのか。人類が注目すべき産業もその発明次第で変わります。

 人類は今世紀末、人口が100億人になると言われています。現時点では、およそ80億人。これからさらに20億人増える。日本の事情と世界では異なるのです。また比較として1900年ぐらいのときには人口はおよそ16億人だったそうです。ものすごい勢いで人口が増加している。そして現状、電気があたり前のように安定して使えていない人口がまだ9億人近くいるそうです。人口がさらに増える、中国やインド、その他途上国の発展はまだまだ続きます。だれもが安定した日本の私達と同じような暮らしをおくる為には、石炭や石油などの化石燃料を主体としたエネルギーがまだまだ必要になります。

 人類が活動を続ける限り、二酸化炭素排出をやめる事は難しい。私達はまず、二酸化炭素排出ゼロを達成する、2050年ゼロカーボンにするという事は簡単ではないという事を知っておかなければならない。聞こえのよい目標意識ではなく、必須条件であるという認識を持っておかなければならない。本当に地球は危機に瀕しているという事を知っておかなければならない

 ここでいう地球は人類にとって都合の良い地球です。人類が快適に生きていく為に必要な地球で、人類と地球が良い関係でいられるバランスです。地球は温暖化になっても存在し続けます。最終氷河期の気温は今より6℃低いだけ、恐竜時代の気温は今より4℃高いだけだそうです。数度の違いが決定的に生態系に影響するという事です。

 その為、今後、10年の活動が、人類の未来を決定すると言われています。

 未来の人類から、「あの時代の人類はひどかった。」「あの時代の人類が判断を誤らなければ、私達の暮らしはひどい事にならなかった。」と言われないようにしなければならないと思います。直接的に、今、私達ができる事は、大きな事ではないかもしれませんが、小さなことから始めましょう。そして何より関心を寄せましょう。今後、いつかやってくるかもしれない小さな決断、大きな決断をする時に、判断を誤らないようにする為に。物事を理解する為には、関心を寄せる力が必要です。関心を寄せることで、ものの真理が少しずつ理解できる。情的に知的に、体取し、体得する。対象をよく見ることから始めましょう。

 今回のCOP26で交わされた文書を「グラスゴー気候合意」と言われていわれているそうす。

 目標の気温上昇を1.5℃に抑える為には、2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする必要がある。そして2030年までに2010年比で45%削減する必要があるそうです。その目標の為に、COP26では各国代表が様々な宣言または声明が発表しました。その中で、私達の暮らしに直接的に変化が求められる項目がいくつかあります。

石炭火力発電の廃止。先進国は2030年、途上国は2040年までに廃止する動きがあります。まだまだ反発が強いようですが、いずれにしてもそのまま使い続ける事はできなくなります。二酸化炭素排出の少ないクリーンなエネルギーをつくるという技術革新が間に合うかどうかとても重要です。太陽光や風力発電も重要です。ただし、それだけでは不十分という事もわかっています。石炭火力発電に依存する途上国の悩みの種でもありますし、日本も他人ごとではない。クリーンな発電エネルギーが求められています。

ガソリン車の廃止。主要市場では2035年、全世界では2040年までに電気自動車もしくは地球に負担のない自動車に新車販売は変わろうとしています。自動車産業は、日本にとって深刻です。豊田さんの発言もありましたが、国の補助や経済的支援等なしに、ガソリン車をすべて電気自動車に180℃転換させるのは日本の実情からして簡単な事ではなく雇用が失われると懸念されています。自動車産業は火力発電に依存している点でも事態は深刻です。

メタンガス排出量の削減。2030年に2020年比で30%削減を目標に。メタンガスについては、私達の食に関係してきます。メタンガスは二酸化炭素の120倍、温暖化の強さを持っているそうです。強力です。そしてそのメタンガスの主な発生源は牛です。牛のげっぷやおならです。30%減らすという事は、牛肉や牛乳、チーズの生産が30%減るという事です。完全にはなくならないと思いますが、牛はこの先、どんどん減らされる事になりますその為に、最近では、ベジミートやオーツミルクなど植物由来のお肉や牛乳を目にする 機会も増えてきました。先日、ベジミートを使ったハンバーガーを食べましたが、普通に違和感なくおいしかったです。(また、ブラジルでは牛を育てる放牧地をつくる為、森林の10%を破壊しているという森林問題も抱えているようです。牛は世界に10億頭いるので、増えすぎているのは間違いない。牛が人間の都合で地球に負担を与えてしまっているのです。)

 変わっていくのは避けられない。それでも追いつかない、間に合わないかもしれないというのが現状です。深刻に考える時がきています。

温室効果ガス排出分野別

電気を使う(発電)分野         …27%排出

ものをつくる(製造)分野        …31%排出

ものを育てる(植物、動物)分野     …19%排出

移動する(飛行機、トラック、船)分野  …16%排出

冷房や暖房分野             … 7%排出

(参考:「地球の未来のため僕が決断したこと 」ビル・ゲイツ著/早川書房)

 何かと話題になりやすい発電は、ものをつくる分野より排出量が少ないのです。ものをつくる分野は資材の生成の過程で発生する二酸化炭素が問題になります。セメントや鋼鉄は化学反応を用いて生成する為、どうしても過程で二酸化炭素を排出する。人口がまだまだ増え、途上国が発展していく事を考えるとさらに増える事は避けられない。現状では、大きな打開策はないようです。炭素回収の技術に期待するしかない。

 木造住宅でも基礎はコンクリートでセメントを用います。コンクリートほど、強度や耐久性、耐候性、耐火性などに強い材料は他にありません。その為、基礎はコンクリートで変わらずあり続けると思います。ただ、日本にいる私たちにとっては、木材は豊富にあるので、住宅という小規模建築においては、上物の構造(本体)は、RC造や鉄骨造とするのではなく、木造とし、木材を使うのが、無理がなく、地球や人類にとってもいいと言えます。

  日本の住宅は、今、性能がもとめられています。11月に国交省が発表した脱炭素社会に向けて断熱等級7が設定され、より性能の高い住まいがもとめられていきます。高い性能の住まいは、人が健やかに暮らしていく為にも必要な部分が多く、直接的にコストに影響もしてきますが、長い時間を過ごす住まいには必要とされるものです。そして高性能の住まいにする事で、小さなエネルギーで地球に負担をかけず、快適に暮らしていける事を目標にしています。一人の人間ができる事は、わずかですが、ちいさな積み重ねが大きな成果を生む。当たり前の事ですが、今はそれを信じて地球の事を考えていかなくてはならないのだと思います。

 先日、上棟した茅ヶ崎の住まいでは、建て前中、建主と少し離れた場所から見守る中、お子さんたちが裸足で自由に土の上をかけまわり、遊んでいた姿が印象的でした。それを見て大人たちもほほえましく笑ってしまう。思わず「令和ではないですね。」と言ってしまいました。私達の子供時代でもあまり経験した事がないような、ほどよく雑草の茂る土の上を裸足で駆け回り、楽しそうにはしゃぐ子供たち。自然と親密ないい関係にあることで生まれる豊かな時間です。上棟式が終わり、もうすでに辺りは暗がりになっていましたが、式のために用意された投光器の明かりが骨組みから漏れ、本体の姿を浮かび上がらせているのが綺麗でした。そしてその背後には、おおらかな眼差しで人間のおこないを見守るようにお月さんがぼんやりやさしい明かりをはなっていました。

人と地球のいい関係を失わないように。

>

椅子を置いてみた 大きな掃出し窓のそばに なんだか居心地良さそう 見るような眺めはないけど空が見える 直接ひかりがあたってないのに 明るくて 爽やかで 清々しい 椅子もうれしそう ちょっと休憩したり 本を読んだり お茶を飲んだり そこで過ごす時間がお気に入りになった 縁側のような場所ができた - そこに在る豊かさ ささやかないい時間 いい住まいのご提案をさせていただきます -  

CTR IMG