東京―変わりゆく町と人の記憶

 こんにちは。月明設計室の中込です。

 早いもので1月ももう終わろうとしています。

 時間は待ってはくれません。何もせずとも季節は変わり、空や木々、見ている景色、色が変わり、肌感覚で季節の移ろいを感じる。変化の中でその季節に合わせた暮らしを自然と行う。繰り返される変化に合わせて抵抗するわけではなく、そこで生きていく為の術を身に付け、当たり前のように日々を過ごす。変化と共に生きていく。

 時間は無限にはない。人それぞれ限られた時間の中で、何かを思い生きていく。そういう気持ちを忘れずに。時間は無駄にはできない。(自分自身に)

 今、東京都の江東区で住宅の計画をしています。古石場という地域で、すぐ隣が木場になります。都内には憧れを若い頃、誰もが抱いたりしますが、年々歳を重ねると下町の東京らしい江戸っ子暮らしにも興味を覚えます。私の育った神奈川とは異なる生活感があり、人間らしい濃密な暮らしを感じる事ができるからかもしれません。

 以前、購入した「東京―変わりゆく町と人の記憶」という本は、今はなき東京の魅力を写真と文章で記録しています。そこで生きる庶民の暮らしをリアルに見る事ができるのです。写真は建築写真の第一人者 大橋富夫、文章とスケッチは建築家の益子義弘と永田昌民。実はこの本、絶版の為、中古をネットで購入したのですが、2回目です。1回目はなぜが到着せず、一旦は諦めたものの、やはり見たいと思い再度購入した本。中古で定価の倍ぐらいの金額だったかと思いますが、改めて調べてみると安く売られている……今お買い得です。

 昭和50年代に撮影された写真です。すべてモノクロ写真で、それがかえって当時感、現在ではない時間の人の営みをリアルに記録しているような気がします。

 今は見る事がない筏師(いかだし)。初めて見たときは意味がわかりませんでした。なぜ川に丸太が流れているのか。

 木場の発端は江戸城造営にあるそうです。江戸城建設の為に家康が各地から材木商を集め、建設後、江戸に残った材木商達が火災等の理由から危険だという事で移動を余儀なくされ、まとまって移動を繰り返し、深川築地町に落ち着いたのが発端だそうです。その際、築地町が木場町と言う名前に変わったとの事。

 そして木場は材木のまちとして長らく歩む事になるのですが、時代は変わり、地盤沈下の問題、輸送手段、作業性等効率化の問題もあり、将来の発展性も考慮され、新しい場所へ、新木場へとまた拠点を移す事になります。昭和49年に大移転が開始されたそうです。写真は大移転が決まり、数を少なくした時代のものだという事になります。

 現在では当時使われていた貯木場は埋め立てられ、名残を感じられる場所がある程度。訪れた際も、以前、川であった場所が埋め立てられ公園になっていました。

 今は失われた職業となってしまいましたが、当時の木場には、原木をまとめて筏をつくり川を利用し、貯木場へと運ぶ筏師の姿や原木を仕分け検品を行う川並という人々が活気に満ちた営みを行っていたはずです。現在でも夏になると木場で角乗りの技を披露し、伝統を残そうとする取り組みがあるそうです。

 時代の変化と共に人々の暮らしを変える。その変化に合わせて生き方が変わっていく。景色が変わっていく。知らず知らず変化を繰り返す、時に大きな変化を感じる事もある。生きている限り変化は常に訪れるという事を考えさせられます。

 何かの本で読んだのですが、今の東京の景色は、戦後、都市計画法によって防火の基準が整備され、コンクリートやモルタルを中心にした建物ばかりの景色となりました。それ以前はすべてが木材でつくられていた。もし変化の時に、安易に防火に強いコンクリートやモルタルを選ぶのではなく、防火に強い木材を開発する方を選んだとしたら、東京の景色は大きく変わっただろうと。

 今は防火に強い木材があります。計画中の住まいで外壁に木材が使えると良いなと思いながら予算と格闘する事になるだろうと明日への期待を持っています。  今できる事を。これからの暮らし、未来の日本に貢献できる何かを模索しながら、今を大切に進んでいきたいと思います。

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椅子を置いてみた 大きな掃出し窓のそばに なんだか居心地良さそう 見るような眺めはないけど空が見える 直接ひかりがあたってないのに 明るくて 爽やかで 清々しい 椅子もうれしそう ちょっと休憩したり 本を読んだり お茶を飲んだり そこで過ごす時間がお気に入りになった 縁側のような場所ができた - そこに在る豊かさ ささやかないい時間 いい住まいのご提案をさせていただきます -  

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