吉田 五十八

こんにちは。月明設計室の中込です。

今回は、吉田五十八(よしだいそや)のお話。

 吉田五十八は日本を代表する建築家の一人。1894年生まれ。太田胃散の創業者の息子で、58歳の時に生んだ子なので名前が五十八。数寄屋建築を近代化し、文化人や政治家など名のある人々の住まいをたくさん設計した建築家です。日本に元々ある伝統的な和風文化をその時代の暮らしに合わせ変容させつつ、日本人がもっている美的感覚を研ぎ澄まし、各部位の納まりの繊細さや材料に対する目利き、こだわり、日本の職人の技を最大値で発揮させるような数寄屋ならではの住まい、お庭との関係もすばらしい住まいを多数残しています。

好きな人には、どはまりするような建築家です。

私も年々、はまっております。

前回のハマスホイとはガラッと変わる日本の歴史や文化、伝統から生まれた和風の住まいです。

 写真は静岡県御殿場にあります東山旧岸邸。内閣総理大臣を務めた岸信介が晩年を過ごした住まい。安部総理のお爺さんの住まいです。写真は昨年の11月末。肌寒く紅葉がきれいな時期。講演会に参加する為に訪れたのですが、周囲にある木々、お庭との関係が美しい住まいでした。

この時に参加した講演会のお話が掲載された本が出版されました。

 価格が税抜き3,400円となかなかのお値段をしておりますが、中身を見ると講演会の話だけではなく吉田五十八の日本建築学上の立ち位置であったり、日本の住まいにもたらした影響力であったり、吉田五十八の仕事を語る読み応えのある内容になっています。

 まだ読み始めたばかりですが、吉田五十八はもともと設計と工事の両方を自身で請け負って工事をしていたので、棟梁と二人の間でしか会話が通じないような高いレベルでの会話ができていたのではないかとか、化粧柱の8面柾目(木目がない)というありえないような事を埋木によって可能にするこだわりようとか、興味深い内容が書かれています。

 中でも木造モダニズムと言われる日本独自のモダニズムの系譜、藤井厚二、堀口捨巳、レーモンド、前川國男、丹下健三、吉村順三の流れとは異なる流れにある事について、木材に対する主さ、木が帯びる艶の違いや仕上の手技の違いがある事について話がされている点も興味深いです。

 出来上がる住まい自体は、今の私たちの素直な感覚からすると、富裕層だからこそできる住まいのつくりという気がしてしまう点も多々あるのですが、私が体感した吉田五十八の住まいのうち、神奈川県二宮町にある旧山川秀峰邸などは、その地に住む庶民の為の住まいをきちんとつくられており、今もそれを引き継いだ人が大切に住まわれている様子を見ると、必要に応じ、建て主に応じ、日本の住まいをつくられている建築家なのだと思えてきます。(旧山川邸は個人邸の為、写真が掲載できないので、お伝え出来ず残念です。)世田谷にある猪俣邸は無料でいつでも見る事ができる素敵な住まいです。こちらもお庭との関係がとてもいいです。

 何を大切に住まいづくりを行うかで、住まいの様子は千差万別。室内はそれでいいと思います。それでも外部は日本の街並み、環境、風土に合わせるという視点が大切。たくさんの偉大な先人に学びつつ、これからの住まいの在り方、理想の住まいの在り方を模索していきたいと思います。

 …ちなみにですが、だれにも決して気づかれないので、自分から名乗りますが、出版された「五十八さんの数寄屋」にわたし映ってます。…感激。小さい男です。

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椅子を置いてみた 大きな掃出し窓のそばに なんだか居心地良さそう 見るような眺めはないけど空が見える 直接ひかりがあたってないのに 明るくて 爽やかで 清々しい 椅子もうれしそう ちょっと休憩したり 本を読んだり お茶を飲んだり そこで過ごす時間がお気に入りになった 縁側のような場所ができた - そこに在る豊かさ ささやかないい時間 いい住まいのご提案をさせていただきます -  

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