- 大草原の小さな家 -

ー大草原の小さな家ー

 ご覧になった事のある方は、違和感を覚えるかもしれません。よく知られている住まいとは違うのです。こちらは、放送第一話にしか登場しないちょっと悲しい運命を辿る住まいです。

 大草原の小さな家は、原作「大きな森の小さな家」の第3作以降のインガルス一家の暮らしを描いたお話になっています。森の中で暮らしていたインガルス一家は、人が増えてきた事で、獲物が少なくなってしまい、新天地をもとめ、インディアンの住む西部を目指します。その旅立ちを描いたのが、第一話です。西部開拓時代の1870年代のお話です。

 この住まいは、お父さんとお母さんが最初に建てた住まい。途中、その後の物語でも欠かせない登場人物、エドワーズさんも手伝ってくれます。今とは異なり、金属の部品も入手しずらく高価だったのでしょう。釘や丁番、すべて木材を削ってつくっている事がわかります。丸太の外壁、屋根葺きも木材、すべて木でできています。

大草原の小さな家の玄関

 その中で私が興味を覚えたのは、玄関ドアです。映像では、物語の途中まで布切れ一枚でドアも付いていないのですが、物語が進むとある日突然、ドアを開けて出ていくお父さんの様子が映し出されています。その時の木が「カンッ。」といい音を立てているのが、何となく耳に残り、気が付くとその仕組みを食い入るように見ていました。

 外にいるローラが、家へ入る時、紐を引っ張っている。家の中からの別のシーン、横に渡されたバーが、紐で釣り上げられ、ドアが開き、上げられたバーが下りると同時にドアも締まる。よく見るとその紐はどうも皮でできている。玄関ドアは内開きで、3枚並べた板を桟木で固定し、丁番も心棒もすべて木でできている。バーが下りる時と上げる時、木と木があたると、「カンッ。」と何とも言えない音を立てている。バーも上がり過ぎないよう木が打ち付けてある。

 

大草原の小さな家の工夫

 この仕組みで、ドアはきちんと戸締りができ、想像するに室内から紐を引っ張ると外には引っ張る紐がなくなるので、外からは開けられないようにする事ができ鍵の機能を果たしてくれる。何より紐で引っ張るとドアを開けられるという行為が何ともいい。そして木だけでできているつくり、木の音。原初的というか原始的、かつ創意にあふれるシンプルなものづくりに共感を覚えました。

 残念ながら、この住まいは、先住民の土地に建てられていたという初歩的な問題があった為、あっさり立ち退きを余儀なくされます。インディアンの酋長との友好な関係があった為、命までは取られずに済んだのが不幸中の幸い。せっかく築いた暮らしと住まいを捨てなくてはならなくなり、悲しみの中で新たな新天地へ旅立つ事になります。

 1870年代、西部開拓時代の先住民との人種問題を背景とし、これから本当の物語が始まるのでした。

 たった一度の放送。その放送でしか見る事のできない住まいですが、よくできています。当時は当たり前の事だと思いますが、プレハブのように簡単に組み立てる住まいとは異なり、木を一本一本削って人力で組み上げてつくるという粗削りですが作り手の思いとそれに費やした時間が感じられるいい住まいです。

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椅子を置いてみた 大きな掃出し窓のそばに なんだか居心地良さそう 見るような眺めはないけど空が見える 直接ひかりがあたってないのに 明るくて 爽やかで 清々しい 椅子もうれしそう ちょっと休憩したり 本を読んだり お茶を飲んだり そこで過ごす時間がお気に入りになった 縁側のような場所ができた - そこに在る豊かさ ささやかないい時間 いい住まいのご提案をさせていただきます -  

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