続・大倉山の住まい

 こんにちは。月明設計室の中込です。

 少し前になりますが、「大倉山の住まい」で、リピート工事をさせていただきました。

 建主のKさんより、自宅で仕事のできる部屋をつくりたいというご相談でした。必要なものはノートパソコンを置ける机があればいい、その他は特別必要ないとの事。計画する部屋はすでに前回の工事で、内装は綺麗になっています。どんな部屋が良いか提案が欲しいとの事でした。

 なかなか難しいご要望でした。仰々しい何か家具をつくるのではなく、部屋をつくる計画です。すでに部屋は綺麗になっています。Kさんが期待されている事に思いを巡らし、お仕事をする上で、大切な事は何なのか考えました。自分らしい答えを求めました。

 大切なのは人の精神状態。目に見える機能より大切なもの。良い作用を与えてくれるような部屋がいい。

 住まいの中にある部屋なので、他の部屋と違和感のない連続と、気持ちを切り替えるような断絶。静かで心穏やかに集中できる環境と、想像力を高め、脳を刺激するような環境。そういった相反するような両義性があるというのが、理想的な状態ではないかと思いました。

 前回の改装工事により部屋は、節のない綺麗なパインの床材や、壁や天井の仕上に用いた漆喰の壁により質感の良い静かな場所にすでになっていました。その場所に嫌味のない特別感を生むような板張りの壁を追加しています。壁はこの場所に相応しい表情となるよう二本溝の入った節のない綺麗な杉材の羽目板とし、木目を残すように薄く白塗装をしています。

 木の持っている効果を期待しています。人に良い作用をもたらしてくれるような木の効果です。壁は特に視認性が高いので、木の表情が伝わりやすい。飽きがこないよう豊かな表情と綺麗さを持ちながら、少しその表情を抑えるぐらいがこの部屋にはちょうどよいのではと思いました。すでに行われている改装工事により、住まい全体、空気感の良い場所になっていました。なんだかここにいると気が良いという感じです。その良い効果をKさんとはすでに共有できていたので、今回のご提案も期待され、疑いなく受け入れてくださいました。

 そしてこの壁はただの板壁ではなく機能をもつ壁として、羽目板の溝部分に合わせて可動棚の金物を仕込んでいます。棚はスッキリと壁から持ち出され、高さを変え、棚を取り外す事も、追加する事もできます。この棚には、何かインスピレーションを掻き立てるような置物、彫刻や絵や本や植物、好きなモノを自由に置いてもらう計画としています。

 窓には、白い木製ブラインドを。あえて白いブラインドを用いる事で、光がより表情やわらかに差し込んできます。光をうつくしく感じる事ができます。素材を木製とする事で、金属とは異なる柔らかさや質量を感じる事ができます。差し込む光を受けた表情が美しい漆喰壁と合わせて相乗効果を生むようです。

 デスク脇にある小さなチェストはこの場所に合わせて、オーク材でつくりました。素朴でしっかりとしたつくりとなっています。生涯に渡って大切にされ、愛される、残っていく家具としてご提案いたしました。

 また、長い時間を過ごす際には、身体を少し動かしたり、つかの間の休憩を入れたり、気分を変えたりする事が大切です。そんな時に、デスクの椅子とは異なり、もう少したっぷり身体を受け止めてくれるような一人掛けの椅子をご提案いたしました。建築家 吉村順三さんが考えた「たためる椅子」です。重量わずか6kgです。軽くて丈夫、たためる椅子なので、持ち運びも簡単です。気分に合わせ、居場所を簡単に変える事のできるくつろぎ椅子です。座り心地は抜群です。

 デスクライトとしてフリッツ・ハンセンのカイザー・イデルをご提案しました。北欧の照明です。無垢の木と対象をなすような金属の有機的なフォルムに特徴のある白く可愛らしいスタンドライトです。デスク脇にある植物のエバーフレッシュもこのお部屋に合うのではとご提案させていただきました。

 前回同様、信頼している工務店さんの素晴らしい技術力のおかげで、よそでは簡単には真似できない質の高い仕上がりになりました。Kさんも今回は住みながらの工事で、監督さん、大工さんの気の使い方、仕事ぶりに感動されておりました。特に今回は、知る人ぞ知る大工さんだったので、感謝感謝です。

 完成直後、喜びの様子をテレビ電話を通じてお知らせいただき嬉しい驚きでした。喜んでいただけている様子を見ると、こちらも喜びと嬉しさが倍増します。今回も、撮影の為に部屋を空けていただき、その後は図々しくもまたお酒を飲みながら、至福の時間をご一緒させていただきありがとうございました。

 また元気をもらいに伺わせていただきます。

‐Works‐に「江東区の住まい」をUPしておりますので、ご覧ください。

 またこれから色々頑張ります!!

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椅子を置いてみた 大きな掃出し窓のそばに なんだか居心地良さそう 見るような眺めはないけど空が見える 直接ひかりがあたってないのに 明るくて 爽やかで 清々しい 椅子もうれしそう ちょっと休憩したり 本を読んだり お茶を飲んだり そこで過ごす時間がお気に入りになった 縁側のような場所ができた - そこに在る豊かさ ささやかないい時間 いい住まいのご提案をさせていただきます -  

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