ルオスタリンマキ 野外手工芸博物館

こんにちは。月明設計室の中込です。

 暑いですね。急にびっくりするぐらい暑くて、エアコンなしの生活が考えられない毎日です。事務所は幸い北向きで小さな部屋なので、エアコンの効きが良くあっという間に冷えるのですが、それでも外から帰ってくるとしばらく汗が止まらず何もできない時間があります。昔からこんなに暑かったのでしょうか。年齢なのか温暖化なのか、そのどちらもなのか、日中の暑さが厳しく感じます。

 エアコンのない時代には、住まいに施された工夫で、過ごしやすさを作り出していました。茅葺屋根は何十センチもある茅の厚みで夏の日射熱を室内に伝えないようになっています。そもそも日本家屋には壁が少なく、引戸で間を仕切るので、戸を開けると風通しがとてもいい。なので昔の日本家屋は夏、意外と涼しかったりする。日本の気候風土に順応して作られているからだと思います。

 でも現代の日本の気候風土を考えると、小さな敷地、小さな住まいの周りにある込み入った街、緑の少ない環境の中で涼しい風をどれほど手に入れる事ができるのか、稀に吹く風はあっても、安定していない。期待していた以上のものを手に入れるのは難しい。茅葺きは吹き替えを循環させる為に必要な仕組みを現代で成り立たせるのが難しい。そう簡単に昔と同じ環境をつくる事ができないのだと思います。また最近の最高気温を聞くとお風呂に入っているかのような温度。そんな温度に対応する為には、別の仕組みも必要になってきているのだと思います。人が五感で感じる部分を大切にしながら、建物に新しい性能や設備をうまく取り入れる必要があるのだと思います。

 2年程前にフィンランドのトゥルクに行きました。少し時間に余裕ができたので、予定にはなかった場所を訪れる事にしました。今回ご紹介するルオスタリンマキ野外手工芸博物館です。

 ルオスタリンマキ野外手工芸博物館。なかなか覚えにくい名前ですね。トゥルクの古い木造建築地区で、1827年のトゥルク大火を逃れた唯一の場所で、18世紀から19世紀のフィンランドの住宅文化を伝える貴重な建物博物館です。富裕層の住む場所ではなく、大工さん等の職人さん達が住む場所だったので庶民の暮らしを今に伝える親しみやすいつくりをしております。移築等ではなく、当時からその場所にあった住まいだという事を後から知り驚きましたが、斜面地に建てられた住まい群はその土地に馴染み木々に溶け込む素敵な佇まいをしておりました。200年以上前からそこに在り続けた住まいです。

 日本とは異なる気候。湿度が低いから植物の茂り方が異なり、茂り過ぎない様子。温度も低いので、開口部が少なく小さく、壁が多いつくり。煙突がいくつもあり暖炉で暖をとる。基本切妻屋根で雨をしのぎ、外壁も板張りで土地に馴染むつくり。北欧の厳しい気候の中で生まれたフィンランドの住まいの在り方。今、日本に住む私たちから見ると不思議と親しみを感じ、理想的な住まいの在り方に見えてくる。

 土地の住所、番地等のはっきりしない時代。職人さんの街。看板が表札と番地代わりになっている。

 通りから一歩入る。建物の下をくぐり、家族の領域に。そこに住む家族が手を加え、維持し、人が増えると住まいも自然と増築し広がっていく。

人の手でつくられた痕と機能性とささやかな装飾美を取り入れ、住まいを豊かに。

天井の低い室内と小さな開口部から入る光。コンパクトさが心地よい。

当時の職人仕事を再現した場所。実際に印刷したはがきをくれます。

当時の暮らしを再現した場所。小さな開口部から入る光。壁に飾られた時計や絵たち。部屋に合わせてコンパクトで美しく機能的な家具たち。小さな部屋にある暖炉。木のぬくもりを感じる場所。十分、今でも暮らせます。

 北欧フィンランドの暮らし。200年も前の暮らし。日本と同じ木造でも気候風土で住まいの在り方は異なる。でもなぜか時が経ち、日本の住まいの在り方も少しづつ変わっていく中で、今見ると手本とする部分、理想とする部分も多いように思う。

 今、日本の住まいは壁を多くつくり、断熱や気密の性能を高める事が求められるようになってきている。そして人にとって快適な温熱環境を設備の力を借りて整える。それと同時に、それだけではなく、人の五感に訴えるような自然と触れ合う感覚を忘れないよう、光や風や緑がもたらす効果、自然素材の肌触りや親しみやすさ、人の手で作られている事が感じられる手仕事感等を併せ持っている住まいが理想的に見える。時代が変わり、作られる社会情勢が変わっても、その時代の気候風土に合わせた住まいが常に求められ、自然とどう関係を保っていくかという事が人間らしい住まいの在り方だという事を教えてくれるようです。

 先人に学ぶ事は多い。人の根っこになる精神は先人が教えてくれます。

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椅子を置いてみた 大きな掃出し窓のそばに なんだか居心地良さそう 見るような眺めはないけど空が見える 直接ひかりがあたってないのに 明るくて 爽やかで 清々しい 椅子もうれしそう ちょっと休憩したり 本を読んだり お茶を飲んだり そこで過ごす時間がお気に入りになった 縁側のような場所ができた - そこに在る豊かさ ささやかないい時間 いい住まいのご提案をさせていただきます -  

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