鎌倉散歩

こんにちは。月明設計室の中込です。

 …雨ですね。毎日、雨。もうすぐ雨はいなくなりそうですが、こんなに雨が続くとは。なんとなく来年もそうなる気がしませんか。今年だけだと良いのですが、だんだん気候が変わってきているような気がします。経験した事のないとか、観測史上初とかいう言葉も良く聞くようになった。それが何度か続くと、当たり前になっていく。今まで晴れの日が多く感じた季節も、そのうち雨が当たり前という時がくるのでしょうか。今年は色々ある中で、雨によっても何となくいつもとは異なる暮らしをしているような気がします。少しづつ少しづつ、地球、日本、自然、環境が変わってきているような気がします。今までが常に基本としてあって、それが安心できる環境であって、変わる事に対しては、なんとなく恐れみたいなものを抱きますよね。先が見えない、読めないから。その気持ちは変わらないけど、変わる事はきっと自然な事。今までも変わり続けていて、気が付かない時もあれば、ある時大きく気が付いたりする。変わっていく環境の中で、新しい地球、自然との関係を常に築いていく。共に生きていく。暮らし方や生活の仕方も少しづつそれに合わせて変わっていく。そういう事柄について、気になったり、感じやすい年齢になったという事でしょうか。変わる事を前提にして、人の暮らし方や、生き方、特に人の精神にとっていい環境をつくるという方向にどんどん変わっていけるといいなと思います。今がすべてではないこれから良くなる可能性もあるという希望を持って。

 そんな天候が優れない中、外出しないと気分が晴れないと、久しぶりに江ノ電に乗り、長谷駅から降りて少し歩き、鎌倉文学館に行きました。傘を持って外出したのですが、天気はだんだん良くなり快晴(晴れ男)。江ノ電からの景色もいい感じです。この日は天気がイマイチの予定だったので、電車も空いていて快適でした。

 鎌倉は湿度が高い。と眼鏡を曇らせながら、マスク姿でより息苦しさも感じながらの爽やかさなしで、じめじめ、てくてく、目的地へ。

 敷地内に入り、緑が増えると急に空気がきれいになる感じがいいですよね。紫陽花も少し残っており、猫に癒され、坂を滑りそうになりながら、入口へ。

 鎌倉文学館は1890年頃、侯爵前田利嗣の別邸として建てられた後、1910年に火事で焼失、1936年に洋風に全面改築再建されたそうです。工事は竹中工務店。1983年に鎌倉市に寄贈され、1985年から鎌倉文学館として開館している。窓が自由でいいですよね。色々なタイプの窓があり、室内からの眺め、外から見る窓の形、作る窓は今は贅沢ですから、ここまで自由に窓があると羨ましく感じます。

 鎌倉文学館に来たのは、井上ひさし展に行く為でした。今はコロナ対策で名前と住所、連絡先を書いて入館します。何かあると連絡をくれるそうです。安心ですね。天気予報の影響もあり、入館者は少なく、じっくり鎌倉ゆかりの文学者、川端康成や小林秀雄の自筆の原稿や、鎌倉を舞台にした文学、鎌倉ゆかりの文学の歴史を常設展で楽しみました。そして特別展の井上ひさし展へ。

 文学少年では全くなかった私には、人物と名前ぐらいのお恥ずかしい認識でしたので、井上ひさしを語るような事はできませんが、社会や政治について、地球規模で、万人に通じる言葉をたくさん残されている方なのだという事が展示からよく理解できます。たくさんの戯曲もあり、小説もあり、文章の作り方についても見る事ができます。

『むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに』井上ひさし

いい言葉ですね。

 展示されている自筆の原稿を読んでいると、気になるお話がたくさんありました。東京セブンローズの中にでてくる帝国ホテル。(出てくるのですか?)人間合格、箱根強羅ホテル、知らない世界がどんどん広がっていくような感じで楽しめます。…無知ですみません。これから時間をかけ、じっくり読んでみます。それ程多くない展示でしたが、人も少ない事もあり、ゆっくり展示されているものと対じでき、その世界観にどっぶり浸る事ができました。いい時間を過ごし、いい休日となりました。

 その後、鎌倉のイワタコーヒーで昼食を。はじめてそんなに混んでない店内で、スムーズに昼食を。天気があやしいと意外といい事ありますね。やっぱりここのパンケーキはうまいです。…いい休日。

 Amazon primeで見る事のできる映画。『駆け込み女と駆け出し男』は井上ひさしの小説『東慶寺花だより』が原案になっています。家に戻った流れで鑑賞しました。とてもいい映画です。東慶寺は鎌倉のお寺です。公開はしていませんが、今も現存しています。映画は江戸時代の1840年頃、女性から離婚ができないという時代。寺の境内に身につけているものを投げ込めば、駆け込みは成立し、2年間、東慶寺で暮らせばその後、離婚への手続きを求める事ができるという幕府公認の実際にあったお寺さんを舞台にお話が展開します。その当時の暮らし、生活の描写が細かく、その時代の生き方が伝わってきます。侍、刀の存在、妻や妾の立ち位置、商いや火を扱う仕事、魚売り、銭湯、使われている言葉とまだ新しい言葉、そして里見八犬伝が大流行している時代を見る事ができます。今とは異なる時代を感じる事ができます。そういう現代とは異なる暮らしを緻密に再現しながら、物語をつくるという事は人の暮らし、人の営為に強い関心がなければ描けない。どうしたらその当時の人達の気持ちが理解でき、そこでうまれる人間模様が描けるのか興味が尽きません。

 住まいを設計するという行為も、人の暮らしや営為をどれだけ理解し、そこでどのような人間模様がうまれるのか想像する力が大切だと思います。その力を養う為に、過去に学ぶ事は大切な事だと思います。世の中には、知らない事が無数に広がっています。その中で、自分が出合い、感じたものの中から次に伝える、次に残していくような事はとても大切な行為だと思います。

 いい鎌倉散歩でした。べったべっただんだん。

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椅子を置いてみた 大きな掃出し窓のそばに なんだか居心地良さそう 見るような眺めはないけど空が見える 直接ひかりがあたってないのに 明るくて 爽やかで 清々しい 椅子もうれしそう ちょっと休憩したり 本を読んだり お茶を飲んだり そこで過ごす時間がお気に入りになった 縁側のような場所ができた - そこに在る豊かさ ささやかないい時間 いい住まいのご提案をさせていただきます -  

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