‐ 音 ‐ 住まいへの影響力

こんにちは。月明設計室の中込です。

 今回は ‐ 音‐についてお話をしたいと思います。住まいにおける音。音楽や映画、テレビから聞こえてくる音。それに生活音。炊事、洗濯、掃除。トイレや洗面、浴室から聞こえてくる水の音、反響する音、人が動く事で生まれる音。足音、扉を開け閉めする音、物を取り出す音、スイッチや家電を使う時に生ずる音、たくさんあるかと思います。そして人が会話をする声が一番聞こえてくるかと思います。全く音のしない日というのは、人が生きている以上はないかと思います。

 これらは、人の意思や行為により発生する音。なので、ある程度コントロールできる。自分自身で音をつくっている時は、それ程気にならない。他の人、家族がつくる音は気になったり、気にならなかったり、聞き慣れた音は、日常になりそれ程気にならなかったりするし、うるさかったら調整するよう求める事ができる。

 自分達が原因で作り出される音は、調整できるのでそれ程気にならない事が多い。

 一方、外から聞こえてくる音。これはいい意味でも悪い意味でも、コントロールできない。いい時はいいのですが、悪くなるととてつもなくやっかいな存在になります。自分でコントロールできないので、不快指数があっという間に上がってしまう。とても難しい存在ですが、住まいにおける影響力は実はとても大きい。

 人が生きていく上で、一番長く時間を過ごす場所は住まい。ほとんどの人はそうだと思います。その住まいで人は様々な事を感じたり、考えたり、学んだりする。そして物事を素直な目で見たり、小さな事に喜びを覚えたり、ささやかな日常を尊いものと思える心を養う、穏かな日々を過ごす、そういう暮らしをする為には、心の平和が必要不可欠だと思います。

 心の平和を保つ為には、ある程度、静かな環境があった方がいい。静寂のある中でかすかに聞こえてくる程よい音は気持ちが良かったりする。

 外から聞こえてくる音が、騒がしいと、心の平和が得られずらい。同じ音でも音のボリュームで不快に感じるかどうかも変わる。私は鳥の鳴く声、囀りが好きです。以前暮らしていた鎌倉の住まいは、森林浴効果抜群の鳥のいい声が響く環境にありました。現在は藤沢の賃貸マンションで暮らしておりますが、最初に寂しさを覚えたのは、鳥の鳴く声が聞こえなくなった事でした。失ってみて、はじめてその存在の大きさに気が付くみたいな。極端な例ですが、もしこの鳥の囀りも、自分のいる場所のすぐ近くで、ずっと鳴いているとうるさく感じてしまう。ちょうどよい距離感と程よい音のボリュームだからいいのです。

 どんなに素敵な住まいができたとしても、この音の環境が良くないと、落ち着かない。工事をしている音がうるさかったり、人の話し声や、車やバイク、電車の音がうるさく聞こえてくると落ち付かない。ビジュアルでは決してわからない、訪れてみて、暮らしてみて始めてわかる音の影響。

 住まいの設計でできる事。計画する敷地にある眺め、光、風、空気感のいい場所を見つけると同時に、人の居場所として落ち着く場所を捉える。静寂をつくる場所を考える。騒音との距離と取り方、壁の作り方、壁と窓の音の透過性の違い、配慮するベき所はたくさんあります。人の居場所をつくるという事を主眼に置くと自然と見えてくる。

 外から聞こえてくる程よい音は住まいにいい影響を与えてくれます。鳥や虫の音で季節を感じる事ができたり、葉が揺れ、雨音が聞こえたり、自分のいる場所、地域、気候が目で見なくてもわかる。聞こえてくる音が違う。一人でも外とつながっているような気持ちにさせてくれたり、安心させてくれるような程よい音があります。

 何事も距離感、間(ま)、バランスが大切です。

 気にしないとおろそかになりやすい。気にしましょう。

 私の事務所は賃貸マンションの小さな一人暮らし向けの部屋ですが、幸運にして鳥の鳴く声が聞こえてきます。近くに小さな公園や川があり、目の前が空き地になっているからでしょう。静寂の中で程よく聞こえてくる鳥の鳴く声は、いいものです。この場所に居て、嬉しい瞬間でした。

 

 

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椅子を置いてみた 大きな掃出し窓のそばに なんだか居心地良さそう 見るような眺めはないけど空が見える 直接ひかりがあたってないのに 明るくて 爽やかで 清々しい 椅子もうれしそう ちょっと休憩したり 本を読んだり お茶を飲んだり そこで過ごす時間がお気に入りになった 縁側のような場所ができた - そこに在る豊かさ ささやかないい時間 いい住まいのご提案をさせていただきます -  

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